rep|rep.08 福島加津也インタビュー 2 / 2

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rep.08「福島加津也|空中の水平」展開催に際し、出展者である福島加津也さんへインタビューを行いました。先にひととなり紹介としてお届けした前半部(参照)に対して、後半部にあたる今回のインタビューでは展示に関するお話をうかがっています。


2012年1月21日:福島さんの事務所にて
聞き手:RAD


―福島さんは構造にとりわけ重きを置いて設計されているという印象を持っているのですが、自身の制作を語る際にはむしろ「合理」という言葉を使われています。どのような意図で使われているのでしょうか?
構造は建築だけではなくて、世界を背後で支えている技術の一つだと思っています。その技術を用いて、世界を「理(ことわり)」に合わせることが「合理」です。現代は大きな戦争や革命がないのに、社会の情勢や政治の方向がダイナミックに変化しています。そのとき「理」もこれまでと同じではいられない。社会の中に誰かが決めた「理」があらかじめ用意されている、という時代ではもはやないでしょう。それでは現代の「理」とは何か。これがいまの僕にとって興味のあるテーマです。先ほど「置き換えられた合理」と言いましたが、僕の建築はその「理」がこれまでと少し違う。構造を考えることはとても楽しいですが、それは僕にとって建築を「理」に合わせるための手段の一つです。
社会の中にある既存の「理」を何か新しいものに置き換えてみると、今まで当たり前と思っていた世界の違った形が見えてくる。最近、陸地の面積と形が正確で、海を分割することなく矩形に収めた珍しい世界地図を見たのですが、これまで僕が知っている世界地図とは全然違うんですよ。「南米ってこんな形をしていたんだ!」というくらいに新鮮です。それは北を上にするというような世界地図の既存の「理」を、陸地の面積と形の正確さに置き換えることによって見えてくる新しい世界の形です。この世界地図をつくる方法はいくつかの技術の組み合わせのようです。一つ一つはとてもシンプルな技術ですが、これまで誰もそれらを組み合わせることが出来なかった。このような試みには共感することが多いですね。
—今回の展示はどのような関心から出発しているのでしょうか?
当たり前のように建築を支えている構造はとても美しいものなんだ、という想いから始まっています。ただ、実際には構造を表現するアイデアや手段はまだあまり豊かではない。いまだに表層と骨格という二項対立や、必要以上の表現主義が多いように思います。構造のような普遍的な営みの面白さを見せるには工夫が必要なのです。
建築学科に入った当初に、自分の感覚と建築の世界との間に溝があることに対して違和感を持っていたのですが、それは当時の僕が建築の世界の見方を知らなかったからだと思います。それはきっと僕だけではないはず。だから建築の当たり前である構造を美しい姿で見せて、建築の世界を開き示したい。
—それに対して「空中の水平」というタイトルが意味するところは?
建築のはじまりは何か、ということを考えていました。僕は柱を大地に突き立てたときではなくて、梁や床を用いて「空中に水平」をつくったときだと思っています。それは人間が少しだけ宙に浮くということです。空を飛ぶ神様にはなれないけれど、地面にいる動物でもない。その中間で一所懸命がんばっているのが建築ではないでしょうか。「少しだけ」だからこそ、そこにはハッと息をのむ感動がある。普通にジャンプしただけならば一瞬ですが、建築はその一瞬を長い時間に引き伸ばす。その姿はあるときに美しく、あるときには滑稽になるんでしょうね。
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コンセプトモデル

—今回の展示についてお話するなかで「力学的な魔法」という言葉が印象に残っています。これはどのような意図で使われているのですか?
僕たちが生活するのは床の上です。自然の中に床のような水平面をつくって一定の期間保つということは、当たり前のようでいて実はとても難しい。その不思議さは「力学的な魔法」といえるほどです。でもしばらくたつと魔法が日常になって、みんなそのすばらしさを忘れてしまいます。魔法はレベルが高いほどその存在がわからないものです。この展覧会を見た人が、「ちょっと待てよ、これもそうなのかもしれない」と忘れてしまった魔法を日常の中に見つけてもらえたら嬉しいです。
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スタディ風景
—そのような意図を実現するに当たって、今回は日常的な素材を選択されるわけですが、この選択についてはどのようにお考えでしょうか?
この展覧会は先にも触れた通り、僕自身が身体感覚的に建築を理解することができなかった、ということを立脚点にしています。その溝に何とかして橋を架けて近づけたい。ただ、その溝の持つ近寄り難さも建築の大事な要素です。近づけたいのに近寄り難いという矛盾を表現するために、紙コップや爪楊枝のような100円ショップに売っている素材を選びました。紙コップのような日常的な素材を使って「水平」というシンプルな形をつくることによって、日常の延長を建築に変えてしまう力学的な魔法が見えてくる。鉄やコンクリートで極細だったり巨大なものをつくった方が「できない」という感覚は強いですが、「できそうだけどできない」の方がみんな悔しがるでしょう(笑)。「すごい、でもコンピュータで無理やり解析して匠の職人がつくっている」みたいなリアクションは面白くない。見に来てくれた人を惹きつけて「美しいね」と思ってもらうだけではなく、「自分にもできそうだけどなぜかできない」という建築の根源的な魅力を感じてもらうことが、この展覧会の大切なねらいと考えています。(了)
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今回展示に使用する素材の一部

プロフィール
福島加津也
建築家。1968年神奈川県生まれ。武蔵工業大学を卒業後、東京藝術大学大学院を修了。伊東豊雄建築設計事務所での勤務を経て、自身の事務所を2003年に設立。建築の根源的な形式と、具体的な技術に注目し、独自の空間やデザインを生み出す。作品は建築に「中国木材名古屋事業所」「e-HOUSE」「柱と床」、家具に「鉄の椅子」などがある。
rep.08|福島加津也展 / 空中の水平
会期:2012年02月24日(金) – 03月25日(日)
時間:金曜日 – 日曜日 13:00 – 20:00
会場:radlab.(京都市中京区恵比須町531-13-3F)
アクセス:京都市バス停「河原町三条」徒歩5分、京阪電鉄「三条」駅徒歩10分
展示に際しまして、2月24日19:00からトークイベントを予定しております。

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