QC vol.2|加藤政洋先生へのインタビュー【後編】

QueryCruise vol.2201022122日「都市景観のヘテロトポグラフィ」を担当していただく、立命館大学文学部教員加藤政洋先生へのインタビューの様子です。専攻される人文地理学とはどのような学問なのか、そこで問題となる「空間」とはなにか、そして加藤先生ご自身のご研究テーマについても少しおうかがいしています。

前編はこちら。ではどうぞ。

―先生のご研究のなかで、大阪のスラムの問題ですとか、硬い言葉を使うと、権力作用を浮き彫りにするような試みが多く見られます。これらのご研究の成果をどのような方々に読んでいただきたいとお考えでしょうか?あるいはどのような方々に向けて書かれていらっしゃいますでしょうか?

 

『大阪のスラムと盛り場』に関して言えば、誰に読んでもらいたいという意識はあまりありませんでした。もちろん専門的な研究として出版しているわけですから、他の研究者にも読んでもらいたいですし、「~の地理学」という名前にしないのは、歴史学の関係者や社会学など、分野を越えて読んでいただきたかったからです。地元の人にとってはごく当たり前の風景ですが、実は裏を返せばこんな歴史があるんだということを、一般の人にも知っていただきたかった。

結果として、社会福祉とか、そういった関係者が多く読んでくださったようです。研究者も含め地元のまちづくり団体も含めてですけど、地元の人に読んでいただき、コメントをいただけたということが、まあ結果論ですけれども、一番勇気付けられましたね。

 

―どういったご反応だったのでしょうか?

 

「ぜんぜんそんなこと思わなかった」というものですね。たとえば釜ヶ崎でいえば、明治35年に行なわれた内国博覧会にあわせて、いわゆるスラムが除去されて、それによって移り住んだというのが定説だったんですが、実はそうではなかったということを提示したんですね。地元の方にとって明らかにされてうれしいこととうれしくないこと両方含めて提示しましたので、それらに対する反応は一概には言えません。ただ、釜ヶ崎に関しては一定程度これまでの説が否定されて、僕の出した説があたりまえのように受け取られるようになったのかなと思います。

 

では今回担当していただく二回のレクチャーではどのようなテーマを設定されようと思われますか?

 

一回目は企画の段階で決まったことですが、街あるきを予定しています。歴史都市京都のあまり振り返られることのない側面について、景観、場所という語句をキーワードにして、ある特定の地区、具体的には西陣の様々な貌(かお)を、みなさんと歩きながら確かめつつ(そこには新景観政策の影響が現れていると思われるのですが)、景観の問題にひきつけながら、お話していこうと思っています。

 

―二日目、フィールドワークの結果をうけたインドアワークはどのようなものになるでしょうか?

 

いま考えているのは、フィールドワーク時にみなさんにデジタルカメラを持ってきていただいて、われわれは景観写真と呼んでいるんですが、ご自身にとって印象的な景観写真をいくつかピックアップして、それをスライドで上映するなどして、なにかコメントをしてもらう。これは「写真観察法」という方法でもありますが、そんなワークショップ、作業、ディスカッションをしてもらえたらな、と思っています。そのなかから、こんな見方もあるのか、ということで、議論がどう進むのかはわかりませんが、そのように考えております。

 

―概要の中に〈京都らしさ〉という言葉が括弧付けで出てきますが、この括弧がまさに京都らしさというニュアンスの微妙さを示しているように思います。

 

そうですね。ですから「らしさ」って何なのか、ということを、一般的に「京都らしい」と言われる風景があると思うんですが、むしろその揺らぎのようなものを抜き出したい・・・最初に手の内を明かしちゃまずいんでしょうけどね、京都らしい風景ってなんだろうね、っていうところから、「らしさ」をめぐる問いは一枚岩ではなく、さまざまなニュアンスが含みこまれた微妙な問題として、その多面性などから揺るがしてみたい。そういった点を戦略的に考えて、あえて京都らしさを括弧つきで提示してみました。「そもそも京都らしさって何?」ということを景観を通じてみなさんに問うてもらいたい、ということが狙いですね。

 

―今回ワークショップの対象地区になる西陣は、どのようにして選ばれたのですか?

  

伝統的な地場産業の地域であると同時に、現在さまざまな問題を抱えているわけですね。地場産業の衰退、空洞化、高齢化、少子化……。そうしたところに、現在では人口の回帰現象なんかも重なってくることで、変化が激しくなりつつある。それこそ町家が取り壊されてマンションが建つとか、新しい住宅が建つだとか、それら現在的変容、そうした都市の現在性のようなものを見て取ることができる。と同時に、非常に狭い範囲の中にまったくカラーを異にする場所が並存している非常に面白い場所なんですね。各々の場所性がヴィヴィドに受け取れるという点でフィールドワークには最適だろうということで選択いたしました。

まあそれを言ったらどこでもできるという話にもなるんですけれども、私が比較的なじんでいる場所でもありますので。

 

―京都と他の都市との比較は?

 

そうですね、今回のレクチャーではあまり考えていません。むしろ京都をめぐるいろんな見方があるんだという視点が重要ですから、そこで他との比較をしてしまうと、京都をある意味一枚岩的に語ってしまうおそれがあるのではないでしょうか・・・それから比較をしてしまうと、一方的なレクチャーと化してしまいますから、それもなるべくは避けたいですね。

 

―どのような方にとりわけ参加していただきたいとお考えですか?

 

特にはありません。昨日も神戸で講演をしてきたのですが、その場合は地元のかたで、地元にいながらあまり知られていない、自分の経験からだとなかなか語れない、僕自身も地元の人からしかいただけない情報、部外者アウトサイダーから見ればこんな見方もできますよということで、相互に刺激し合える機会になるんですね。それこそ50代から70代までちょっと高齢の方たちだったんですけれども、それも歴史を生きてきた人たちだったので、すごく勉強させてもらいました。この企画の狙いでもあると思うのですが、双方向性が重要になってくるでしょうから、なにか分野を区切ってとかではなくて、とにかくいろいろな見方で特定のフィールドに対してどのような意見交換ができるかということを思っております。ですから、京都のことをあまり知らなくてもまったくかまいません。

interview by RAD / S

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