QC vol.2|加藤政洋先生へのインタビュー【前編】

kato2.jpgQueryCruise vol.2201022122日「都市景観のヘテロトポグラフィ」を担当していただく、立命館大学文学部教員加藤政洋先生へのインタビューの様子です。専攻される人文地理学とはどのような学問なのか、そこで問題となる「空間」とはなにか、そして加藤先生ご自身のご研究テーマについても少しおうかがいしています。

では前編。どうぞ。
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―まずは加藤先生がご研究されている人文地理学について簡単に説明していただけますか?


人文地理学というのは、土地空間上のあらゆる人文的な現象を理解する学問です。経済活動であったり、あるいは村落における生活であったり、さまざまな現象を解き明かす、と言っておけば無難でしょうか。

―ここで言うところの「地理」という言葉はどのような意味を持っているでしょうか?

字面からしたら、地の理(ことわり)ということになるのでしょうが、「ジオグラフィ」という言葉の方が先なのだと思います。「学」というよりも、土地空間上(geo)の事象を記述する(graphy)ということに、もともとは重きが置かれていたんだろうというわけですけれども、「ところ変われば品かわる」ではありませんが、そうした記述的なところからもう少し学問として体系付けられるときに、そこに何らかの法則、構造が見出され、発展してきたんだろうと思います。

―人文地理学の歴史はどれくらいのものでしょうか?

それこそヘロドトスにまでさかのぼるのではないでしょうか。哲学者たちの発想にはかなり地理的なものがありましたし、時代をグッと下ったカントなんかも『地理学』という本を書いていますので、もともと哲学的な思想のなかに地理学的なものがあったのでしょう。学問として体系付けられるのはもちろん近代に入ってからだと思いますが、歴史学同様、そうした長い歴史を有している学問だと言えます。

―人文地理学の特徴は?

基本的にはなんでも受け入れる学問です。特徴としては、土地空間上のさまざまな現象、配置、位置関係を、やや広い空間的なひろがりのなかでとらえるということですね。ですから建築単体のようなスケールではなくて、街区かそれ以上の空間的ひろがりのなかで最も力を発揮しやすいのです。一番重要な点は、空間へのこだわりを棄てないというところでしょうか。現在は「空間論的転回」と呼ばれて、さまざまな人たち、たとえば歴史学の人たちも空間論ということを言い出しているのですが、これまでの愚直さがようやく認められてきたのかなと思いますね。ほとんど都市社会学とやっていることは変わらなくなってきているようにも見えますが、地図的な表記の仕方や空間的な思考、場所にこだわるという構えは、人文地理学固有のものかなと思います。

―人文地理学のこだわる「空間」とはどのようなものでしょうか?

見方によってさまざまに変わると思います。たとえば線で分割することによって空間が立ち現れます。これは、建物を建てたり、特定の土地を利用したりという、ものそれ自体として、容器としての空間。一方で都市計画において重要なように、遠い近いというような他所との相対的なかかわりももちろんあります。さらに、これは「場所」といったほうがいいかもしれませんが、ゲニウス=ロキ的な場所の意味であるとか、そこに暮らす人の愛着、それらの対象という面もある。いろんな見方によって、いろんな姿をとるのが空間です。たとえば人々の愛着を無視して道路を通すといったときに、その愛着の受け止められる空間と都市計画上の空間との間で衝突がおきますし、それぞれの性質によって緊張関係が異なると思うんですね。これが地理学的な空間論の基本的な考え方です。

―景観を語る際に「空間」という概念は非常に重要ですね。

実は景観も空間も地理学固有の語句なのです。ランドスケープスタディーズも、建築や都市計画の分野で言われていますが、もともとはやはり地理学の概念だと思います。地理学の立場からすると、ランドスケープという語も大分意味が変わってきていて、おそらくドイツの「ランドシャフト」から来ていると思うのですが、「ランド」つまりある程度の広がりの中で捉えられていたわけです。しかし、今ではどちらかというと、「way of seeing」として、つまり「ものの見方」として考えられている。言わばモノそのものというよりは、それをまなざす人間とか社会のあり方を映し出すと考えるわけです。かつて醜いとされていたものが今は貴重であるとか、景観そのものというよりは、政策レベルでのものの見方、あるいはイデオロギーのようなものがあらわれてくると思いますね。

―では、加藤先生がご研究されているテーマについて教えてください。

ぼく自身は、近代以降の都市形成の歴史地理をテーマにしています。都市化がどのように進んできたのかということは優れて空間的な現象ですけれども、そういった都市形成のあり方を、具体的なフィールドに例をとりながら研究しています。

―京都だけにとどまらず、様々な地域をご研究されていらっしゃいますが、研究対象地域の選択にはなにか基準や目安があるのでしょうか?



基本的には、経済活動が活発であったり、行政の中心になっていたりするところはあえてはずして、その周辺といったらいいのでしょうか、ペリフェリーというか、マージナルというか、そんな場所にいつも注目してしまいます。そうしたところは、花街だとか、少しいかがわしい盛り場だとか、あるいは歓楽街、場合によっては貧困現象が目に見えて出てくるような場所であったりするわけですけれども、そうしたものこそがある種都市のダイナミズムを支えているのではないかなと思うのです。ただし、それらの場所の成り立ちをきちんと解明できそうな都市を選び取ってていますので、ある程度大きな都市に限られてしまいますね。

後編へつづく

interview by RAD/S
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