QC vol.2|大庭哲治先生へのインタビュー【前編】

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QueryCruise
vol.2の2010年1月24日25日分「都市景観の「値段」とその評価基準について考える」を担当していただく京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻助教大庭哲治先生へのインタビューです。都市社会工学とは何か、コンサルタントでの前職の様子はどのようなものだったか、景観に値段をつけるとは、などなどについておうかがいしています。先生のひととなりが垣間見えるようなインタビューとなっていれば幸いです。

とりあえず今回は前編。ではどうぞ。

 

―都市社会工学とはどのような分野なのですか?

 

たとえば京大では、都市社会工学は人間活動の基盤となる持続可能で、安全かつ国際競争力のある都市システムの創造を目的とする総合工学と説明しています。私は、都市計画、交通計画、国土計画に関連するいくつもの学問を包含する学際的な分野だと捉えています。

 

 

―大庭先生はどのような計画に携わっているのでしょうか?

 

 

大きくは二つのテーマにわかれます。一つは学生時代から継続している景観やまちづくりに関する調査研究ですね。2000年前後に京都市都心部で町家が壊されて中高層マンションが建てられていったという状況のなかで、それを疑問に思っていたことが出発点です。現在、私は京都の新景観政策の評価システムの委員をしていたりですとか、京都の町中に実際に入っていって京町家や景観の実地調査ということをしたりですとか、そういうことをしながら京都の今後の景観のあり方を調査したり、計画策定に関わったりしています。もう一つは、在籍している研究室の先生方と一緒に、公共交通に関する調査研究をしています。公共交通は、地域の足として非常に重要なものであり、また地球環境や安全といった面からみても、その意義に疑いの余地はないのですが、地方都市ではなかなかそういう方向には向かっていないという現状がありますね。公共交通の利用促進に関する計画策定に関わっています。

 

 

―前職として「三菱UFJリサーチ&コンサルティング」にお勤めですが、当時の仕事と現在の仕事とのつながりをどのようにお考えですか?

 

 

前職では、研究員として、国や地方自治体といった行政のクライアントから調査業務を受託し、業務遂行と調査結果などを説明する資料や報告書の作成を主におこなっていました。その内容は、行政経営、都市計画、交通計画に関連するものでしたので、現在、研究として取り組んでいる内容とは非常に近いものがあります。ただ、前職の場合は、当然のことながら商業ベースでしたので、テーマや対象はちょっと偏っていました。また、そのときどきによってクローズアップされる行政課題がテーマになることが多かったように思います。

 

 

―具体的にどのようなお仕事をされていましたか?

 

 

前職での在籍年数が少ないので、関わった調査数は30くらいしかないんですけれども、印象に残っている調査を2つご紹介しますと、まず1つ目は、京都での路地をはじめとした細街路の調査業務です。京都は、密集市街地で狭隘道路が多く、それが都市防災上、非常に危険です。一方で、京都らしさといいますか、歴史的風情もありますので、一概に細街路を拡張していこうということではいけない。そのあたり、細街路を今後どのようにしていくべきなのかを考えていく必要があり、まずは現状がどうなのかを把握するということで、調査をしました。一日あたり十人くらいの学生アルバイトを使って、京都の上京区、中京区、下京区、東山区、これら4区の細街路を徹底的に調査し、細街路がどこにあるのか、幅員はどれくらいなのか、延長はどれくらいなのか、隣接している家屋が木造なのかそれ以外なのか、そういうことを住宅地図とにらめっこしながら、すべて回りました。2つ目は、関西における都市高速道路整備の効果に関する調査業務です。昨今、道路行政に対する批判が多い状況ですが、新しく高速道路を作った場合に、どういう経済効果があるのか、時間短縮はどれくらいになるのか、環境負荷がどれくらい減るのか、そういったことを定量的に把握するという調査をしました。いくつかのシナリオを設定して、膨大な統計データを利用しながら、説明資料及び報告書を作成しました。

 

 

―「景観の値段」という言葉を挙げていただきましたが、そもそも景観に値段をつけるということが、なぜ必要なのでしょうか?

 

 

景観まちづくりの現場では、住民、行政、その他多くの人々が関係してきます。景観を保全・整備していこうとするなかで、人々はいろんな立場からものを言ったり行動したりするんですね。このような状況で、合意形成をして一つの方向にもっていくことは至難の業です。声の大きい人が先導を切って「より良い景観を整備していこう」と言う。それにみんなが問題なくついていくということであれば、それはそれで良いのでしょうが、通常、景観の保全や整備にあたってはコストもかかりますし、総論賛成各論反対といったケースが多い。その場合、合意形成に資する情報や判断材料が重要になってくるわけです。この情報や判断材料が、何か定量的なもの、客観的なデータでもって示すことができれば、主観的・感情的な合意形成とはまた別の合意形成をうながすでしょう。そういうときに、景観を保全・整備すべき価値がどの程度の価値を有しているのかが明らかになれば、景観の重要性や保全・整備方法の検討につながります。実際に景観の価値をはかってみようということですね。

 

 

―合意形成の尺度となるために値段をつけるとのことでしたが、たとえば点数性ではダメなのでしょうか?

 

 

合意形成において、確かに点数性が有効な場合もあると思います。しかし、景観の保全や整備にあたっては必ずなんらかのコストが生じる。そのコストに見合った効果や、価値をみんなが抱いているのかというときには、メリットデメリットをお金で換算する必要が出てきます。コストは実際にお金を払っているのでその金額を確認すればよいのですが、効果、つまりみんなが受けているメリットの部分については、どれくらいのお金になるのかというのはなかなかわからない。それを環境経済学で使われている方法論を使って貨幣化することによって、メリットのほうが上回っていれば、意義があるということになりますし、下回っていれば考えを見直すことになりますし、次のアクションにつながっていくわけです。そういう意味でも貨幣化は非常に重要になってきます。

 

 

後半へつづきます

 

 

interview by RAD/S

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大庭先生レクチャーへの申し込みは info@radlab.info までどうぞ。

件名に【QueryCruise vol.2申し込み】と書いておいてください。

 

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